2005 年 7 月 20 日

「不思議な穴」 (建築とまちづくり No.334)

民家再生:不思議な穴1旅の楽しみと言えば、普段は見かけない不思議な物や光景に出遭う時だ。4年前英国を旅した時に気になったのがスケッチにあるような穴の連続であった。一つは石壁に取り付けられた木製の箱に開けられた穴、もう一つは倉庫かガレージの妻側に開けられた穴である。

前者は鳥の巣箱かなと直感した。しかしよく観察すると、扉に穴の開いたものと開かないものがあるのが不思議だ。また、巣箱にしては2階建て13戸と高密度 な集合住宅で、しかも2階右端の一戸だけ大きいタイプがあるのもおかしい。さらにこの奇妙な箱の上部には、いかにも象徴的な窓が屋根裏から突き出してい る。これらの観察を総合して結論を出そうと試みるが、我が灰色の脳味噌では単なる巣箱以上の画期的結論が浮かび上がらない。

後者のものは穴の形が興味深い。上端が尖ったイスラム風アーチなのだ。そしてこの総計17個の穴の開いた石はほとんど同じ形の石あるいはコンクリートであ る。すなわちある程度一般化されたものであることがわかる。そうなるとこの地方の農産業に関係のあるものかと考えるが、すぐには思いつかない。穴の前には わざわざ石を跳ね出した棚が連続している。鳥が羽を休めるための棚と考えるのが自然のような気がする。これを鳥小屋、例えば鳩小屋と考えてみよう。そうす るとこの小屋の屋根裏空間はすべて鳩の住居ということなのか?

民家再生:不思議な穴2と ころで、我が国でも屋上や屋根上に鳩を飼っている家を見たことがある。伝書鳩として飼育したり、レースに出場させるという人から、単に空に鳩を放って楽し むという人までいる。英国で鳩レースが盛んという情報があればすぐに結論を出すのだが、今のところそれは無い。食用としての鳩だろうか?フランス料理のメ ニューには鳩が並んでいるし、実際食べたこともある。淡白で癖の無い美味しい肉である。しかし英国料理のメニューで鳩は見たことがない。こうして私の灰色 脳細胞は思考停止に陥る。

再びこの倉庫の外観を見る。整然と左右対称に開けられた穴。この穴からちょっと何かが顔を出してくれれば一瞬にして結論が出る。しかし忙しい旅の途中でこ こに長く立ち止まることは許されない。解決の見えないままに次の場所に移動することになる。そして不思議な穴は記憶の中で永遠の疑問のままに残る。そして 次の旅で同じような穴を見つけるのがまた楽しみとなる。

だから旅は止められない。

カテゴリー: 所長日記 — yutaka @ 12:39 AM

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