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民家移築再生:左官三昧の家

所在地:神奈川県
移築前所在地:秋田県湯沢市
推定建築年代:明治中期

施 工:(解体工事)シーモア岡田デザイン (再生工事)小嶋工務店 (左官工事)長田左官工業
竣工年:2013年
規 模:木造2階建 延べ床面積 107.23㎡(32.44 坪)

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 古民家移築を夢見ていた建て主ご夫妻との最初の出会いは当社が事務所を構える鎌倉の築130年の「結の蔵」でした。それもあって建て主は蔵の移築を希望されていくつかの物件を東北地方に探訪する旅から計画が始まりました。

 そして求めた土地の条件に当てはまることや2階天井の梁組が気に入ったことが決め手になり秋田県の築150年の土蔵を選びました。設計は全体のテーストを「大正レトロモダン」にという希望を取り入れながら蔵の持つ伝統的な木構造の素晴らしさを可能な限り生かすことを目標にしました。

 もう一つの目標は“民家は寒い”というイメージを払拭することでした。そのため建物の性能は北国並みの高気密高断熱になっています。その一端として1階の暖房は“床下内暖房”を採用。床下に置いたエアコンの暖気を室内に出すと同時に床材を温める床暖房効果にも利用しています。また併せて2階居間に設置した暖炉の熱をダクトで1階床下まで導いて1,2階の温度差を少なくする工夫もしています。この暖房方式は大変快適であることを2シーズン過ごした建主が実証してくれました。材料は土と木と紙という天然素材を大胆に使っています。特に左官工事は様々な技術を駆使しており全て鏝を使った手仕事で仕上げています。

 移築工事は秋田県側の工務店と鎌倉側の工務店との連携によって進められました。秋田側では番付(部材の番号付け)を打って部材を丁寧に解体、中でも重量が4トン以上の戸前は架台を作成して長い輸送に備えました。鎌倉側ではその戸前を載せる基礎を正確に作成することに神経を集中しました。巨大なトラックが狭い道路にようやく入って無事すべての部材が敷地に入った時の安堵感はいまだに忘れられません。すべての構造材が組みあがったことを祝う上棟式には餅まきをして近隣に初めてのお披露目となりました。こうしてこの蔵は新たな土地鎌倉で生きて行くことになりました。

なおこの建物は日本民家再生協会の2014年度『民家再生奨励賞』を頂きました。