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民家移築再生:昭和初期の思い出の別荘を、鎌倉に移築

所在地:神奈川県鎌倉市
施 工:斉藤建設
竣工年:2006年
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元の家は奥様のご実家が所有していた横須賀市秋谷にあった別荘。
昭和初期頃の建築と推定しましたがご実家が購入する前からあったのでもっと古いかもしれません。遺産相続で解体される運命にあった時にO設計室に相談にお見えになりました。「こんな粗末な民家でも移築する価値がありますか?」というのが最初の言葉でした。早速拝見すると確かに部材は細く特別に立派な民家ではありません。

しかし南と東に縁側が回る昔ながらの佇まい、障子や板戸は現代の住まいには求められない質を持っていました。移築は可能でありその価値が十分あることをお話ししてこのプロジェクトはスタートしました。天井を取ると屋根裏に美しい丸太の梁が見えてきました。この梁組みを食堂の天井に現すことにしました。奥座敷は当初の通りに復元、トイレもそのままで壁だけ赤い漆喰塗りで仕上げました。浴室と台所は一新することにして浴室には桧風呂を据えています。

元は天井が全ての部屋に貼ってあり小屋組が見えませんでした。解体によってそれらが剥き出しとなり、雪国のような立派な小屋組ではありませんが、先人の細やかな細工が垣間見えたのです。そこで居間と中の間は吹き抜けとして、とても風通しの良い広々とした空間になりました。

鎌倉の暑い夏に対処する方法としてご夫妻は京都で見かける葭戸(よしど)を提案しました。古材店から葭戸を購入して夏には全ての襖を交換します。その為の建具収納庫を作りました。見た目にも涼しく風も適度に通る葭戸は日本の気侯が生んだ素晴らしい建具であることを確信しました。こうして思い出の民家は鎌倉で再生され庭園工事も引き続き行われました。新たに建てられた門を潜って庭を見ながら玄関に入ると昔と変わらない縁側が我々を迎えてくれます。3年経った今ではこの土地に前からあった建物のように見えるようになりました。